萬勇鞄は自社の工房内でランドセルを手作りしています。
萬勇鞄のランドセルは様々な部分にこだわって作っていますが、
現在の社長である二代目が若かりし頃、先代から特に大切だと教えられていたことが2つありました。
先代の教えは、二代目を通して現在も萬勇鞄に受け継がれています。
今回はランドセルを作る際に大切にしていることをご紹介いたします。
ランドセル作りで大切にしていること①目打ち
以前のランドセルと言えば手作りが当たり前でした。
もちろん、仕上げもすべて手縫いです。
ランドセルを手縫いする、と聞くと手縫いの技術が必要に感じますが、
実は手縫いの技術だけではなく、手縫いの前段階である「目打ち」の技術を持っていることも大切です。
目打ちというのは、革に穴を開ける作業。
革というのは丈夫で固いものなので、そのまま縫うことは大変難しいのです。
ですから、革を縫いやすくするために穴を開ける必要があります。
目打ちにも良い悪いがあります。
良い目打ちにするためには、目打ちの間隔と縫ったときの糸の閉まり具合に気を配ることが大切です。
縫う際にどこを縫っても、同じように斜めに締まるように、穴を開ける技術が必要なのです。
手縫いというのは時間がかかるものなので、この目打ちを丁寧に行い、仕上げるようにしています。
ちなみにこの目打ちというのは、日本の高度な技術のうちの一つ。
現在では日本からヨーロッパに目打ちの技術が伝わり、手縫いのカバンなどを作る際に目打ちが行われるようになっています。
ランドセル作りで大切にしていること②素材の目利き、型入れ
ランドセルを作る際にもう一つ大切なのが、素材の見極めと型入れの技術です。
ランドセルになる前の天然皮革というのは、大きな一枚の革の状態です。
その革をランドセルの部品ごとに分けるために、革に下書きをすることを「型入れ」と言います。
大きな一枚の革に下書き、と言っても、実はどこにでも下書きできる訳ではありません。
天然皮革には怪我の跡やシワがありますし、革の場所によって特徴がいろいろあります。
ですから二代目は先代から、革の場所を見極めてランドセルのパーツを採るように教えられました。
例えば革の場所によってよく伸びる部分、伸びない部分があるので、
肩ベルトには伸びない部分を使う、などを細かく教わったのです。
昔ランドセルを作っていたころは、革の型入れというのは引退後でもベテランの職人が行っていました。
それだけ型入れというのは、ランドセル作りにとって大切な工程なのです。
現在においてもいいランドセルを作るために、この型入れと素材の見極めを大切にしています。
萬勇鞄が手縫いにこだわる理由
萬勇鞄のランドセルを作る際に大切にしていることをご紹介いたしました。
手縫いや目打ちというのは、時間も手間もかかるものです。
ではなぜ萬勇鞄では、現在でも手縫いにこだわっているのかというと、
「愛着を持った製品を作りたい」と考えているからです。
以前「
名古屋の手縫いの歴史」、「
萬勇鞄の歴史」の中で、
・名古屋には戦前から、馬具作りを通して手縫いの歴史があったこと
・かばん屋さんからランドセル専門店にシフトしていったこと
をお話しいたしました。
戦前から現在まで受け継がれてきた手縫い、
そしてその手縫いをしたランドセルに、萬勇鞄は愛着を持っております。
ランドセルは6年間お使いいただくものです。
長く使っていただくものだからこそ、
たくさん作ってたくさん利益を出して、という売り方よりも、
愛着がありこだわって作ったものをお客様のお手元に届けたい、と考えております。
こだわりを詰め込んでいる分、たくさんのランドセルを作ることはできませんが、
その分一つ一つ丁寧に想いを込めて、ランドセルを作り続けていきたいと思います。
萬勇鞄のランドセルがこれからもたくさんの方に愛され続けるように、これからも精進して参ります。